2022年12月8日発売 © TYPE-MOON
プラットフォーム:PS4、Nintendo Switch
2012年にPC向けに発売されたビジュアルノベル「魔法使いの夜」が、PS4/Nintendo Switch向けにフルボイス化・フルHD化されて復刻・移植されています。
その体験版をプレイしたので感想をお伝えします。
1 テキストのテンポが良く、控えめな演出がむしろ没入感を深める
ジャンル名としての「ビジュアルノベル」という言葉は初めて聞いたのですが、プレイしてみたら「なるほど、これは確かに小説(ノベル)だ」と思いました。
テキストベースのいわゆる「アドベンチャーゲーム(ADV)」なら、謎解きのために「調べる」などのコマンドを駆使したり、シナリオの分岐となる「会話・行動選択」があったりするのが定番ですが、本作ではそのようなコマンドや選択肢は登場しません。
したがって、やることと言えばコントローラーのボタンを押してテキストを読み進めるだけなので、インタラクティブなゲーム性は皆無と言って良いでしょう。
しかし、テキストは一文一文が短めで読みやすく、ゲーム機でテンポよく読み進めて行けるように相当な配慮がされていると感じました。
また、BGMは抑え目で、どちらかというと風や水が流れる音といった環境音やモノが当たった音などの効果音だけ、あるいは無音の場面が多いのですが、背景画像・キャラクターの表情・環境音・効果音を場面に応じて上手く切り替えることでテキスト以外から緊張感やほのぼの感といった雰囲気が感じ取れるので、そのような演出に伴って没入感もどんどん深まって行き、自然と先に先に読み進めて止まらなくなる、といった感覚にもなりました。
自分のリズムでどんどん読み進めることもできるし、思わず考え込んで立ち止まっても自分がボタンを押さない限り(ページをめくらない限り)先に進まないという意味では本を読んでいるのと同じですが、絵や音もテキストに合わせて切り替わるので、本とはまた違った「ゲーム機ならでは」の没入感が生み出されているように思います。
2 フルボイス化は賛否が分かれるかも
フルボイス化自体は、一般的には臨場感・没入感を高めるものでしょうし、個人的にも違和感を感じる場面はほとんどなく良かったと思います。
ただ、没入感や集中力が高まってくるとテキストを読み進めるスピードが上がって、ボイスがセリフを読み終わるのを待つのがかったるいなと感じる場面が少しありました。
ボイスが終わらないうちに次のテキストに進むことももちろんできるのですが、それはそれで声が途中で途切れて変な感じになりますし。。。
なのでフルボイス化は概ね良好だと思いますが、引っ掛かる人も一定数いそうだなとは思いました。
3 劇場アニメーション化も予定されている模様
時期は未定ですが、本作の劇場アニメーション化も決定されているようです。
もしかしたら、映画化のプロモーションの一環として10年前のPC向けノベルゲームをフルボイス化してPS4/Nintendo Switch向けに復刻した、ということなのかもしれません。
ただ、原作者の「奈須きのこ」さんはゲーム向け(主に「Fate」シリーズ)のシナリオライターとして著名な方ですし、その文章には本作の体験版の範囲だけでも惹き込まれるような魅力を感じました。
もちろん「ゲーム」という媒体を活かした演出も効果的に活用されているのだと思います。
今の時代は中高年でも小さいときからテレビゲームに親しんできた方が多いでしょうし、「大人でも楽しめるノベルゲーム」と感じられる体験版でした。
4 こんな人におススメ
現実には起こりそうにない不思議な世界観や怪奇な物語(伝奇もの)に触れるとついつい自分の空想世界に浸ってしまう人におススメです。
以上、ご参考になれば幸いです。