法務マンのスキル特性

法律実務家としてキャリアを積むことで身につくスキルついてまとめた記事です。

はじめに

今から20年前の自分が、一体どれほどの覚悟をもって司法試験への挑戦を始めたか、記憶が定かではありません。
正直、「文系資格試験の最高峰で自分の力が通じるのか試してみたい。挑戦しておかないと後々後悔しそう。」くらいの考えだったような。
あとは「就職活動がめんどくさそう」というのもありましたね。

「社会正義のため」とか、「都心のでっかいビルで朝から晩までバリバリ働き稼ぎまくって、周りからの敬意・信頼も獲得して社会的成功者になるんじゃ~」みたいな野心も特になく、挑戦の時間制限を設けるわけでもなく、安直に試験浪人生活に突入しました。

その結果、司法試験合格まで10年を費やすことになりましたが、まあ、何とか人生を破綻させる前に、運よく合格できました。

そして、その後、会社の法務部門で約10年キャリアを積んできました。

ということで、「法務マン」という素養は、もはや自分とは切っても切れない只ならぬ関係になってしまっているので、今後の人生を豊かにするためにも、自分の強みの1つとしてここで一度整理しておきたいと思います。

特性1:スキル・キャリアの汎用性が意外と高い

(1)スキルの汎用性

まず、当たり前といえば当たり前ですが、法務部門は当然法令に関係する会社や個人の問題に対応します。
そして、法令は全国どこでも共通の内容で同じように全員に適用されるのが基本なので、同じような問題には同じように適用され同じような結論になることが多いわけです。

そのため、対個人でも対組織でも、仕事でもプライベートでも、普遍的に使えるスキルになり得ます。
もちろん知識やスキルのアップデートは常に必要ではありますが、それは専門職・プロと呼ばれる職業なら、どれも同じですからね。

(2)キャリアの汎用性

次に、法令の種類も内容も膨大ですから、すべてに精通するのは当然不可能です。
しかし、ある程度得意な専門分野(独禁法とか、PL訴訟とか、特許法とか)ができてくると、会社や業種を跨いで専門性を磨き続けることが比較的やりやすい

例えば、当局調査対応(独禁法など)、消費者トラブル・紛争対応(PL訴訟)、知財戦略(特許法)といった実務法務の切り口は、ある意味どんな規模の会社であれ、どんな業種であれ、「全く無関係でいられる」ということの方が少ないですから、転職したり立場(個人か組織か)が変わったりしても、継続的に専門性を高めることができます。

私は1年ほど別の会社の法務部門に研修出向した経験がありますが、出向先の会社の社内用語やビジネスモデルの特徴などを把握できれば、仕事自体は出向元にいたときと余り変わらずに取り組めたと思います。

(3)ストック型のノウハウ

あとは、契約審査にせよ、いわゆる法律相談案件にせよ、法務担当として悩みに悩み、依頼部署と一緒に知恵を出し合い、時には弁護士など社外専門家を使うなどして辿り着いた法務回答・見解は、確実にストック型の人的・物的資産、ノウハウ、経験となります。

前提条件がほぼ共通の案件であれば、過去回答の提示だけで一瞬で終わることもありますし(その場合、相談相手から尊敬の眼差しを向けられるオマケ付き)、苦労して「解決」まで辿り着いた「思考過程」は未知の案件にも応用できることが多いです。

特性2:真面目にやってれば社内失業しにくい

上記のように、法務マンのスキル・キャリア自体がもともと汎用性が高いので、依頼部署の悩みや組織のコンプラ問題に真摯に向き合い、毎回華麗に解決とまでは行かなくとも、仕事が順調にかつリスクを回避しながら適切に回るよう日々工夫・改善を積み重ねてきたのであれば、少なくとも社内では時間や部門を超えて通用する「課題解決マン」として頼られることが多くなっているはず。

あんまり相手の言いなりになっていると「ただの便利屋」みたいになる危険性もありますが、まあその辺は「断る勇気」とかの別の一般スキルの話ですかね。

特性3:コンサル能力が身に付つきやすい

どちらかというと「大企業の法務部」に当てはまる話かなと思いますが、企業法務では継続的取引関係の構築(取引基本契約の締結など)をはじめ、M&A、工場閉鎖・移転、訴訟、当局調査対応、社内不正調査などなど、様々なプロジェクト案件(長期・特殊案件)があります。

こういったプロジェクト案件で、「法令(手続関係など)」や「契約締結」といった、プロジェクトの分かりやすく重要な区切り(マイルストーン)となる場面で、法務マンの力が必要になることが結構あります。
案件内容が複雑になるので、契約審査・法律相談で培った課題整理能力、論理的思考力、解決策の提示力(分かりやすく説明する力)など、実務的かつ総合的なリスクマネジメント・スキルが鍛えられますし、経営層・社内関係部署・社外専門家(弁護士、会計士、コンサルなど)といった案件に関わる人間との協力・調整といったプロジェクト管理スキルも鍛えられます。

なので、こういう案件は「華やかそうに見えて、実はかなり泥臭くて大変」という案件ですが、法務マンとして真面目に頑張ってれば、周りからは「頼れるヤツ」という評価を得られるとともに、「何かあったらコイツにまっ先に相談しよう」と思わせる=コンサルタント能力が身に付きます。
(ただし、社内にいる限り「顧客開拓」という重要スキルは獲得困難ですが)

まとめ

ということで、法律系の資格試験を合格しただけで当然に「できる法務マン」になるわけではありませんし、向き不向きもあるのですが、会社等の組織に属しながら法律を軸に自分のキャリア・スキルを築いていくことは、将来的に組織に残るにせよ、個人事業主として独立を目指すにせよ、あなたのキャリア・スキルを豊かなものにしてくれる可能性が高いと言えます。

以上

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