何かと議論が多い「外部ツール」。
「使用禁止」という運営のスタンスは明確である一方、定期的にコミュニティで議論の対象になるのも確かなので、零式初心者向けに改めてその実情や心構え全般を解説しました。
1 はじめに
「零式」は、FF14における「高難易度コンテンツ」の代表格で、さらにその高難易度コンテンツの中でも「レイド※」と呼ばれるバトルコンテンツの代表格でもあります。
※レイド(”Raid”):
「強襲」「急襲」を意味する言葉ですが、MMORPG的なオンラインゲームでは、ソロでは到底クリアできないダンジョンやボス戦を、複数のプレイヤーで攻略するコンテンツ(要するに「高難易度コンテンツ」「(ハイ)エンドコンテンツ」のこと)を指す。
要するに、零式はFF14の花形コンテンツです。
①FF14の最強装備は「最新の零式装備」
厳密には、零式装備以外が最強(最終)装備になる部位が2~3個あるのが通例ですが、それはあくまで例外。
最新パッチの最強装備を手に入れたいなら、零式装備(特に武器)がなければお話になりません。
そして、「強くなりたい」という以上に強力なモチベーションも中々ないはず。
そのため、最新零式をしっかり遊ぶ層が少数派と言っても、絶対数はかなり多いと思われます。
また、そもそも「最新零式」を最後(4層)まで踏破していないと「絶」コンテンツを解放できないですし、「絶」踏破のためには零式装備を含む最高の装備であることが当然想定されています。
②「最新零式」実装時は経済が動く
「最新零式」を早期に攻略するためには、新式装備、メシ、薬といった様々な準備が必要になるので、FF14内の経済が大きく動きます。
要するに、マケボ取引が活発になる好景気です。
対人取引(プレーヤー間のアイテム売買)が盛んになるので、「商機を掴めば短期間で莫大な稼ぎを出せるチャンスがある」という点で、零式を遊ばない層にとってもMMOならではの醍醐味が味わえます。
もちろん誰もが思いつく行動をしているだけでは儲けることは難しいですが。
一方で、ノーマルコンテンツとは異なり、高難易度コンテンツはギミック処理が他人依存型=他メンバーとの連携・役割分担がほぼ必須で、一人の失敗が即ワイプ(全滅)に繋がるものが多数出てきます(「大縄跳び」とも言われる所以)。
この「大縄跳び」が「強くなりたいという強力なモチベーション(を皆が持っている状況)」と合わさるとどうなるか?
何となく想像はつくかと思います。
「自分はちゃんとミスなくやれているのに、別の誰かのせいでクリアできない!(という他人を責めたくなる気持ちが湧く)」という状況が容易に生まれるわけです。
もちろん裏を返せば「他メンバーはちゃんとミスなくやれているのに、自分のせいでクリアできない・・・(すまねぇ)」という状況も容易に発生するので、「お互いさま」であるのは間違いありません。
しかし、一期一会の野良パーティでは、メンバーの練度も実力も様々で「(自分を含む)特定の一人または複数人のミスでコンテンツをクリアできない」という状況はよく発生しますし、そういう状況ではミスなくちゃんとやれている人が不満を持ったりぼやきたくなったりするのが人情というもの。
そして、そういう状況が続けばパーティメンバー間で「厳しい発言」が飛び交うこともあるでしょうし、人間である以上、売り言葉に買い言葉、言葉足らずや誤解、その人の性格などなど様々な要因が重なってトラブルに発展する可能性があることも否定できません。
ということで、零式界隈では、こういったトラブルや不都合を回避し、一期一会のメンバーでもクリアできる可能性を上げるための不文律とか「お作法」が存在します。
往々にして、こういった不文律は「どこまで従うべきなのか」が曖昧なわけですが、だからこそ、そういった「初心者・初級者には見えないところ」も含めて、零式にこれから挑戦する人の参考になるよう整理したいと思います。
2 準備事項
一言で言うと「自分にできる最高の準備をしましょう」であり、私個人の考えとしては、
- 最新の新式装備と最新マテリアのフル禁断
4層踏破を目的とした上で、「その時点での最高の装備を準備しましょう」ということです。
(目的や挑戦のタイミング次第で、準備すべき装備も変わるとは思います) - 自ジョブの適切なスキル回しの理解と練習
最低でも該当木人討滅戦での木人破壊成功。 - 自ジョブ向けの適切な最新秘伝書の「飯」と「薬」
「自分が出せる最大火力を出す努力をしましょう」ということですね。一時的なステータスアップ要素ではありますが、上記の「スキル回し」が「飯込みのステータス」を前提とする場合もあります。
に尽きると思います。
3 心構え
今回メインで扱いたかったのはこちらです。
(1)ACTについて
さて、このACT(アクト)について触れるかどうか迷ったのですが、現状を踏まえると、これから零式に挑む人にとってはやはり知っておくべきことだろうと思うので、私個人の理解する限りでまとめておきます。
ACT(アクト)とは、”Advanced Combat Tracker”の通称(略称)で、もともとは”Ever Quest II”という過去のMMORPG用に設計・公開された有志による非公式のソフトウェアです。
率直に言うと、ACTは基本機能として「バトルログの数字を集計してDPSを計算する」機能を有しており、「FF14で零式(を含む高難易度コンテンツ)を遊ぶプレーヤーの相当数がACTを導入している」と考えた方が良いです。
これはすなわち、「あなたが強いのか/弱いのか」ということを、他のパーティメンバーが具体的な数字として把握していることを覚悟した方がよい、ということです。
さらに、その「具体的な数字」はFF Logsというサイトにアップロードされ、ランキング化されるケースもあります。
もちろんACTは非公式の「外部ツール」なので、この「具体的な数字」の正確性を100%担保する根拠はおそらく「ない」でしょう。
しかし、公式のDPSメーターが存在しないFF14では、このACTの数字が「自分が強いのか/弱いのか」を把握するための指標として相当数のプレーヤーに利用されているのが現状と思われます。
また、仮にACTの数字が多少不正確だとしても、それなりに多数のサンプルを集計し、統一的な計算方法/基準で算出されたDPSの数字として「参考/信頼に値する」と考えるプレーヤーが相当数いるのも実情ではないかと推測します。
そこで、こういった現状の是非を論じる前に、まずは運営の立場を確認しましょう。
(2)外部ツールに関する運営の立場
外部ツールに関する運営の立場を理解する上で重要な「アナウンス」が2つあります。
2020年見解について
第57回FFXIVプロデューサーレターLIVE(2020年2月6日放送)
上記リンクは2020年2月6日放送の公式まとめです。冒頭40分程度を使用して、FF14におけるMOD※と外部ツールの使用に関し、運営の公式見解として詳細に言及しています(以下「2020年見解」)。
※「2020年見解」で言及されたMODに関するGAME Watchさんの記事(2010年5月12日付)のリンクも、参考として下記に記載しておきます。
PCゲームを彩るMOD文化について知っておきたいこと ゲームあるところにMODあり。面白いものはコミュニティで作られる!(【連載第25回】あなたとわたしのPCゲーミングライフ!!)
> ② 外部ツールは使用禁止(再確認)
外部ツールについては、「外部ツールとは何ぞや?」という定義づけが難しいことは承知のうえで、開発・運営チームは一貫して「外部ツールは使用しないでください」というスタンスをとっている。
そして、無数にあるアプリやソフトに対して、ひとつひとつOK/NGの線引きをすることはできないし、ツールという定義が曖昧である以上、「ツールは全部禁止」だからと言って何でもかんでも開発・運営が取り締まるのも現実的には不可能。
そうである以上、外部ツールの使用はそのプレイヤーのアカウントがリスクを負うことに他ならない。
ちなみに、公式のダメージ計算ツールを実装することはない。
その理由は、コミュニティで諍いの火種になり得るものだから。
> ③ハラスメント行為はツール云々以前に論外
他プレイヤーのDPSを計算し、それをネット上で晒して貶めるなどの行為は明確にハラスメントであり処罰対象。
これはツールの使用可否以前の問題。
> ④プラグイン(機能拡張)に対する方針
ACT等のプラグイン(機能拡張)に対する方針については、プラグインの中には、ゲームバランスに悪影響を与えたり、メモリを不正に操作したりといった悪質なものがあり、これらに関しては、ペナルティを受けるリスクが非常に高く、開発・運営チームとしても以前からシステム側で悪質プラグインを防ぐ対策を進めている。
2022年見解について
FFXIV外部ツールの是非について(2022年5月9日付トピックス)
上記リンクは2022年5月9日付で公開された運営からのメッセージです(以下「2022年見解」)。
なお、メッセージの冒頭で「本文は『全文』で意味を成しますので、一部の抜粋や切り抜きによる拡散は控えていただけますと幸いです。」とコメントされています。
このメッセージは「2020年見解」を少し具体化したものですが、興味がある方は是非リンク先の吉田P/Dコメントを直接ご確認ください。
- 2022年4月26日
パッチ6.11「絶竜詩戦争」実装 - 2022年5月上旬
➤ 「絶竜詩戦争」クリアのWorld 1st チームが公開した動画に外部ツールが映り込んでいたため、国内外のコミュニティで議論が巻き起こる。
➤ その後、World 1st チームの関係者がTwitterにて「議論の対象となっている外部ツールは100万ダウンロードされている。当該外部ツール使用の是非について、吉田P/Dに判断してもらいたい。(BANも含めて)結論がどちらでも、ユーザーは運営の決定に従うと思う。」という趣旨の投稿を行う。
(なお、当該投稿は後になって削除された模様) - 2022年5月9日
運営より「2022年見解」のアナウンスあり - 2022年5月10日頃
「絶竜詩戦争」の攻略を実況配信していたユーザーで、「外部ツール」が配信画面に映り込んでいたり「外部ツール」の使用を公言したりしていた一部のユーザーが「配信中にGMから『監獄』に呼び出される」といった取締まりが実施される。
なお、2022年5月10日頃の「取締り実施」が、いつ頃FF14運営内で意思決定されたのかは分かりません。
しかし、それなりに大規模な取締りに見えたので、個人的には、World 1st チーム関係者のTwitter投稿より前に「取締り実施」の意思決定があったのではないかと推察します。
(ユーザーに煽られて「場当たり的に」動いた可能性はないと考えています)
(3)私見
以下はあくまで「2020年見解」および「2022年見解」では明言されていない私個人の考えです。
2020年見解に対する私見
①については至極真っ当だと思います。
②についても、内容について違和感はないし、個人的には「ACT等の外部ツール使用のリスクはユーザーが負うものであるという前提を忘れないでほしい」というメッセージだと理解しています。
2020年見解では、ACTを含む外部ツールについて「使用しないでください。使用者のアカウントにペナルティが科されるリスクがあります。」と明言しています。
一方で、ACTの基本機能(バトルログの数字を集計してDPSを計算するいわば”電卓機能”or”表計算機能”)を例として、「仮に外部ツールが、データの改ざんなどを伴うものではなく、ゲームバランス損なうものでもなく、建前としては自己研鑽の道具として想定されているもの(だが、それをきっかけにハラスメントなどのトラブルに発展するリスクがあり、コミュニティ内でも評価がわかれるようなもの)」をどう扱うかは「大変難しい」という悩みも素直に見せています。
ただ、そのすぐ後に「使用者はペナルティのリスクが常にあることを忘れないでほしい」という趣旨の念押しもしています。
たまに、後半の「悩み」の部分だけを都合よく抜き出して「ACTは黙認されている」というコメントを見かけることもありますが、そういうことではないでしょう。
結局は「ゲームやコミュニティにとって悪影響や害があると開発・運営が判断するか否か」に尽きるのであり、たとえACTの基本機能といえども「開発・運営はゲームに実害があると判断すれば、今すぐにペナルティを科されてもおかしくない」のが現状かと思います。
「ユーザー各自の楽しみ方をできるだけ尊重したいが、それは『ゲームをより良いものに発展させる目的』の下での信頼関係が前提であって、その『目的』や『信頼関係』を履き違えたり捻じ曲げないでね」ということかなと個人的には理解しています。
2022年見解に対する私見
私としては、「2022年見解」は「2020年見解」とほぼ同じ(「優先的に調査する際の基準」への言及など、少し具体化された程度)という認識です。
「配信者が『監獄』に呼び出される様子がライブ配信された」ということもあり、公式フォーラムやまとめサイトで多少騒ぎになりましたが、運営の立場に何か変化があったわけではないと思います。
たまに「ルール運用が厳しくなった」(運営が「見て見ぬふり」から「積極的な取締り姿勢」に変化した)というコメントも見かけますが、過去も現在も「個別の取締り状況」(特定のユーザーがBANされたかどうか)は公開されていませんし、「厳しくなった」と決めつける根拠に乏しい気がします。
というか、これまでも普通に「取締り」はあったんじゃないですかね?
「配信中の監獄呼び出し」を「見せしめとして意識的に行った」というのはあるかもしれませんが。
また、運営が優先的に調査する際の基準 の1つとして挙げられた「ゲーム/コンテンツの攻略を容易にするような外部ツールや機能の使用」という項目だけに着目し、例えば「Discord(ディスコード)」(ゲーム界隈ではボイスチャット(VC)アプリとして利用されることも多い)も「声掛け(コール)によって難度が下がるから『外部ツール』だ!」という形式的・短絡的な議論の立て方・コメントも見かけます。
私自身はVCをやったことがないので「どれくらい難度が変わるか」といった肌感覚が全くないのですが、上記「2020年見解について」でも述べたとおり、「開発・運営が、VCに関し、ゲームやコミュニティにとって悪影響や害があると判断するか否か」という実質論で考えるんだろうと思います。
それで、この問いに対して運営は「個別のツールに対して、いちいちアウト/セーフの線引きはしない」と言っているので、ユーザーの自己責任で判断するしかない点も「2020年見解」から変わっていないわけです。
本記事でVCの是非を詳細に論じるつもりはありませんが、個人的には「仲の良いプレーヤー同士でやいのやいの通話しながらゲームを楽しむ行為」が、それだけで「FF14に対して悪影響や害を及ぼす」とは思えないかなあ、といったところでしょうか。
一方で、名誉をかけた「レイドレース」で、プレーに参加しない「コール専門の9人目」を用意する、といったケースは微妙になってくるかもしれません。
ただ、現状、FF14の「レイドレース」はユーザー側で勝手に盛り上がっているイベントなので、「ユーザー側でレースのレギュレーションを決めればいいんじゃないの?」という気はします。
いずれにせよ、形式論だけで考える実益はないと思います。
(4)まとめ
で、長々とMODや外部ツールに関するFF14での状況を紹介してきて言いたかったことをまとめると、以下の通りです。
- ACT等の外部ツールの使用は禁止されているが、一律的・形式的なルール運用や取締まりというのは現実的ではなく実益もないため、外部ツールを利用するプレーヤーが一定数いる状況は現に存在するし、それがゼロになることも考えにくい。
- したがって、高難易度コンテンツを遊ぶ場合は、例えば自分のDPSの値を他人に知られる可能性があることを知っておいた方が良い。
この現状を良しとするかどうかについて、様々な意見があるのは間違いないでしょう。
開発・運営から明確に「使うな」と言われているツールを利用し、他人のDPSの値を覗き見たうえで、自分よりDPSが低い人に対し、自己研鑽目的から外れてわざわざ「煽る・嫌味を言う」というのは論外(悪いに決まっている)として、「熱心になるあまり、(DPSの低い人に対して)つい乱暴な/厳しい発言が出た」といったケースは、ツールがある限り無くすことは難しい気はしますが、個別の状況次第では問題ない場合もありそうとは思います。
(発言内容が建設的なアドバイスと言える場合など)
一方で、こういうことを言うと「じゃあ、処罰されないギリギリのラインを狙えばいいんだろ?」みたいなコメントも見かけたりしますが、これは「そもそも『目的』や『信頼関係』を履き違えるなよ」という感じですかね。
この手の人たちは、最初から「相手を怒らせる/不愉快にさせる」ことが目的だったりするので、そういう悪意が見て取れる場合は「相手にせずに粛々と通報する」のが最善だと思います
いずれにせよ、好むと好まざるとにかかわらずに「外部ツールを利用するプレーヤーと一緒にコンテンツを攻略する」可能性があることは認識したうえで、「一緒になったプレーヤーへの敬意を忘れずに楽しく遊ぶ」という心構えをノーマルコンテンツのときよりは強く意識する必要があるのかなと思います。
4 最後に
ということで、今回はツールに関連して零式に挑む際の「心構え」を考えてみました。
個人的には「自分が強いのか弱いのか知りたい」というニーズは理解できますし、私自身はツールの存在自体はほとんど気にしていないのが正直なところです。
(PCゲームでもある以上、当面は無くすのは無理じゃない?という感じ)
また、今のところ、ACT等の外部ツールに起因するトラブルに巻き込まれたといった経験も私にはありません。
そして、「2020年見解」では「ツールだったり、通報合戦だったり、ペナルティだったり……それらは普通に楽しんでいただいていればまったく関係のないものです。プレイヤーの皆さんにはゲームそのものを楽しんでいただきたいですし、我々も皆さんと一緒に楽しく開発を進めていきたいと思っています。」と締められています。
なので、「普通に遊んでいれば特に問題ないが、高難易度コンテンツの特性上、トラブルに巻き込まれる/目にする可能性がノーマルコンテンツより若干高い」(そんなに怖がる必要もない)くらいの意識で、心に余裕を持つ(疲れているとかストレスが溜まっているときはゲームより休息を優先する)ことの方が大事かなとは思います。
以上
参考記事
フェーズ詐欺現象との付き合い方
FF14の高難易度コンテンツに挑戦する上で、避けては通れない「フェーズ詐欺現象」。
フェーズ詐欺「現象」で悩んだりストレスを受けていたら、少しは心が軽くなるかもしれません。