できすぎチンクルパック(&社長が訊く『ニンテンドーDSi』)

2009年6月24日にDSiウェアとして配信が開始された「できすぎチンクルパック」についてまとめました。

配信開始:2009年6月24日(2023年3月28日で配信サービス終了) © Nintendo

1 はじめに

ニンテンドー3DSシリーズおよびWii Uの「ニンテンドーeショップ」サービス終了(2023年3月28日)により、現在は遊ぶこと自体が困難となっているDSiウェアの“できすぎチンクルパック”

ゼルダシリーズの派生作品ではありますが、ゼルダファンの私としては2023年3月以降に遊べなくなるタイトルがあったら困るので、eショップサービス終了前にダウンロードしました。

ということで、今回“できすぎチンクルパック”を取り上げてみたいと思います。
さらに、このかなりマイナーなソフトの記事を開いてもらえたのなら、「ニンテンドーDSi」つながりで「社長が訊く『ニンテンドーDSi』(2008年10月24日公開)」に触れないのはもったいないので、その辺りのお話もご紹介したいと思います。
(どちらかというと、こっちがメインかもしれません)

2 概要

タイトルできすぎチンクルパック
配信日2009年6月24日
コンソールニンテンドー3DS/DSi LL/DSi
※ニンテンドーDSiウェアソフト。
「ニンテンドーDSiウェア」とは、ゲームだけでなく「ちょっと役立つ小道具」といったゲーム以外のソフトをニンテンドー3DS/DSi LL/DSi本体に追加できるサービス。
移植・復刻状況なし

3 「できすぎチンクルパック」の内容

(1)ニンテンドーDSiウェア(内臓メモリ専用ソフト)の1つ

上記「概要」にも記載したとおり、本ソフトは「ニンテンドーDSiウェア」なので、パッケージ版はありません。
また、「ニンテンドーDSiウェア」は、「DSiの内蔵メモリ」(DSシリーズではDSiから初めて搭載)に、ユーザーがお好みで追加していくソフト(今の「携帯アプリ」みたいな感じでしょうか)のため、「普通のゲームソフト」とは位置づけがだいぶ異なります
(「社長が訊く『ニンテンドーDSi』 ハード編 4. 自分なりのDSに」参照)

2008年当時は、今ほど記憶媒体の容量が大きくなかったこともあり(せいぜい数十~数百MB)、「ニンテンドーDSiウェア」ではボリュームの小さいミニゲームやお役立ちアプリの提供が想定されていました。
そのため、「できすぎチンクルパック」も「ジャンル:お役立ち小道具」(公式ページ)とされおり、ゲーム性はほとんどありません

(2)遊ぶ方法

現在(2023年3月28日9:00以降)、このソフトを入手することはほぼ不可能と思われます。

できすぎチンクルパックをダウンロード済みの中古ニンテンドー3DS/DSi LL/DSi実機を確保するという手段も考えられるますが、現実的とは言えないでしょう。

(3)ソフト内容

下記の折りたたみの中で、内容を簡単にご紹介しています。

全部で下記5種類のゲーム?が実装されています。

①チンクル占い

いわゆるタロット占いです。
「本日の運勢は?」みたいなノリで使う感じですかね。

一度引いたカードが記録されて行くので、コレクション的な遊びになっています。

②チンクルタイマー

タイマー機能。
あらかじめセットした時間が経過すると、アラームとして「チンクルのうめき声」が鳴り響きます。

③チンクル電卓

通常の電卓機能のほか、割り勘金額の計算ができる「幹事電卓」機能があります。
合コンの会計時に颯爽とDSを取り出して割り勘を計算する人はいたんでしょうか。

④チンクルダンサー

上画面の背景にDSiのカメラで撮影した写真を表示できるようになっており、タッチペンを使って下画面のハンドルをぐるぐる回すと音楽が流れ、上画面のキャラクターがそれに合わせてダンスします。
「DSiサウンド」(タッチペンで触ることによって、音の高さ、音楽のスピードやピッチを自由に変更できる機能)を利用したお試しソフトという感じでしょうか。

⑤チンクルめくり

アタリのコインの数を決め、下画面でランダムに配置されたコインをタッチペンで選択し、アタリ/ハズレを引いていくゲーム。くじ引きや、「アタリ/ハズレ」を利用したグループ分けに使える感じでしょうか。

上記の通り、本ソフト自体にゲーム性はほとんどありませんが、「ニンテンドーDSi」が発売された2008年や、本ソフトがリリースされた2009年頃って、WiiやDSのヒットにより任天堂の業績が「過去最高」を毎年更新していた時期でした。
そんな中で、「ニンテンドーDSi」自体は「DSのマイナーチェンジ版」でしかなかったと言えます。

しかし、WiiやDSの次の方向性を模索するためだったのか、当時の「社長が訊く」ではDSiの開発・発売の背景だけでなく、任天堂の歴史の振り返りみたいなこともまとめられています。
ゼルダシリーズと直接関係するわけではありませんが、意外と知られていない歴史や人物同士の巡りあわせを読み取れる内容も記載されています。

そこで、下記の「4 社長が訊く『ニンテンドーDSi』(2008年10月24日公開)」について」で見どころをピックアップしました。

4 社長が訊く『ニンテンドーDSi』(2008年10月24日公開)について

(1)任天堂と小田部洋一さん

小田部洋一さんと『うごくメモ』篇

小田部洋一さんをご存じでしょうか?
恥ずかしながら、私は上記の「社長が訊く『ニンテンドーDSi』(2008年10月24日公開)」の中の「小田部洋一さんと『うごくメモ』篇」を読むまで存じ上げておりませんでした。

しかし、調べてみれば、「アルプスの少女ハイジ」のキャラクターデザインを担当されていたり、東映動画で高畑勲さん・宮崎駿さんとも一緒に仕事をされていたりなど、まさに日本アニメ界の大御所。

そして、小田部さんが任天堂に開発アドバイザーとして入社されたのが1985年12月ということで、ファミコン(1983年7月15日発売)以降、任天堂ゲームのキャラクターデザインを通して、まさに日本ビデオゲーム産業の勃興・発展を支えた方と言えるでしょう。

なお、小田部さんの経歴等については、下記のファミ通さんの記事でも詳しいです。
クッパのイメージはスッポン。任天堂のキャラクタービジュアルの礎を作った、小田部羊一氏がみずからの仕事をふり返る(ファミ通.com、2018年10月15日付)

上記のファミ通さんの記事では、小田部さんは「ディスクシステムで初めての『ゼルダの伝説』、そのプロモーションビデオを作ろうというので、大阪にあるプロモーションビデオの制作会社に監修に行くというのが僕の最初の出張でしたね。」と話されています。
なので、小田部さんとゼルダの関わりは、初代ゼルダのときからあったということになります。

しかも、小田部さんのゼルダシリーズに対する影響はキャラクターデザイン等にとどまりません。
おそらく小田部さんがゼルダシリーズに与えた最も大きな影響は、ゼルダシリーズの現「総合プロデューサー」である青沼英二さんと任天堂の「縁」を取り持ったことでしょう。

この話は、電ファミニコゲーマーさんの2017年3月2日付「まず2Dゲームで開発、社員300人で1週間遊ぶ!? 新作ゼルダ、任天堂の驚愕の開発手法に迫る。「時オカ」企画書も公開! 【ゲームの企画書:任天堂・青沼英二×スクエニ・藤澤仁】」で、青沼さんご自身が話されています。

ゲームに興味のなかった青沼さんが、小田部さんを通じて任天堂へ入社することとなり、そこからゲーム史上に永久に残る傑作であろう「ゼルダの伝説 時のオカリナ」が誕生したわけで、ゼルダファンだけでなく、ゲーム好きであれば知っておいて損はない貴重なエピソードだと思います。

(2)任天堂とアップル

「ニンテンドーDSi」が登場したが2008年。
そして、2008年は、7月11日に「iPhone 3G」(日本で初のiPhone)が発売され、今から振り返れば、まさに「『スマホ』がこれから普及し始める」というタイミングでした。

とはいえ、当時の私は「携帯音楽プレーヤー『iPod』で成功したアップルが、今度は『iPod』に電話機能を付けて売り出したぞ?(上手く行くのか?)」みたいな感覚でした。
当時は、まだまだガラケーが一般的でしたし、現在の「iPhone」に代表される「スマホ」は「一部のガジェット好き(マニア)が趣味」みたいな雰囲気もあったように記憶しています。

そんな中で、「社長が訊く『ニンテンドーDSi』(2008年10月24日公開)」の「番外篇~訊いている社長に訊く~」にて、下記の当時の岩田社長の言葉が収録されています。
「株式会社ほぼ日」から出版された「岩田さん 岩田聡はこんなことをはなしていた。」(2019年、100~101頁)にも収録されている内容です。

「年齢性別経験を問わず楽しめるものをつくる」という

任天堂のミッションをこなすときの姿勢と、

「機能はシンプルであるほうがいい」とか、

「わかりやすくあるべきだ」とか、

「その場に選択肢が多すぎるとお客さんが戸惑うから

単純化したほうがいい」というような

Appleの企業哲学、もっというと、

スティーブ・ジョブズという人の価値観には

一定の共通項があると思っています。

しかし、一方で、明らかに彼らはハイテクの会社で、

任天堂はエンターテインメントの会社ですから、

やはり、優先度の置き方には大きな違いがある。

たとえば私たちは、あと0.5ミリ薄くできることより、

丈夫にすることを、間違いなく、躊躇なく選ぶと思いますし、

逆に、Appleが、iPodを自転車のカゴの高さから

何度も落とすような耐久試験をするべきだとは思いません。

Appleと任天堂に共通点があるとすれば、

「シンプルにすることによって魅力を際だたせる」

というようなことじゃないかと思います。

物事は、突き詰めていくと、どんどんシンプルになる。

でも、やっぱり違いますよ。優先順が違うから。

「番外篇~訊いている社長に訊く~」

この「社長が訊く」の公開直後、「2008年10月31日(金)経営方針説明会/第2四半期(中間)決算説明会 任天堂株式会社 社長 岩田聡 講演内容全文」でも、「ニンテンドーDSi」の開発意図や市場投入の理由を投資家向けに説明する中で、「ニンテンドーDSiのカメラ機能、音楽プレーヤー機能は、既存のデジカメや音楽プレーヤーに対抗しようという意図ではなく、あくまでゲーム機として『一家に1台』から『1人に1台』を目指す」という趣旨の説明がなされています。

この岩田さんの言葉は、ゼルダシリーズとあまり関連するわけではありませんが、任天堂の経営理念というか、当時の任天堂社長としての岩田さんの考えを知るうえで、押さえておきたい出典だと思います。

5 まとめ

本記事の前半部分で説明したとおり、「できすぎチンクルパック」は現在入手がほぼ無理となっているうえゲーム性もほとんどなく、通常のプレーヤーにとってそれほど価値があるソフトではないかもしれません。
ただ、今から振り返ればマイナー機種である「ニンテンドーDSi」を通じて、意外と知られていなかった任天堂の歴史や人物の巡りあわせに触れてみるのも良いのでは思います。

この記事がゼルダシリーズに興味がある方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

以上

一口にゼルダシリーズと言っても「どれくらいの作品数で、『今』常識的な予算・方法で遊べるタイトルはどれか?」といった辺りを整理しました。

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