「ゼルダの伝説 夢をみる島」に関し、オリジナルGB版にもフルリメイクNS版にもないCEROの「セクシャル」アイコンが3DS VC版にのみ付いている謎を追いました。
1 はじめに
1993年6月6日にゼルダシリーズ4作目として発売された「ゼルダの伝説 夢をみる島」。
オリジナル版はゲームボーイ(以下「GB」)用ソフトで383万本の売上でしたが、2019年9月20日にはNintendo Switch(以下「NS」)用ソフトとしてフルリメイク版が発売され、売上600万本(2021年12月末時点)を超える大ヒットを記録しています。
この「夢をみる島」は、おそらく人気も根強く移植や復刻の要望も多かったと思われる割に、1998年12月12日にゲームボーイカラー(以下「GBC」)用ソフトとして発売された「夢をみる島DX」以降、10年以上GBやGBC以外のコンソールでは遊べなかったんですよね。
そんな中、2011年6月8日にニンテンドー3DS バーチャルコンソール(以下「3DS VC」)にて配信が開始されたのが、今回取り上げる「夢をみる島DX」(3DS VC版)。
この「3DS VC版」は2023年3月28日で配信終了しましたが、幸いにも2023年2月9日より「NSO版」をスイッチで遊べるようになっています。
そして、「3DS VC版」に関しては「あること」が語り草になっていました。
そう、大して内容は変わらないはずなのに、オリジナルGB版にもフルリメイクNS版にもないCERO※の「セクシャル」アイコンが3DS VC版にのみ付いていたのです。
ちなみに、マイニンテンドーストアのページでは「ゲームボーイ Nintendo Switch Online」サービス全体に対して「セクシャルアイコン」がついています。
しかし、私はフルリメイクNS版はクリア済みですが、特にエロ要素は思い浮かびません。
3DS VC版/NSO版のどこら辺がセクシャルなんだ?そして、どのくらいセクシャルなんだ?と謎は深まるばかり。
そこで、その謎を解明すべく我々はコホリント島の奥地へ向かいました…。
※CERO (Computer Entertainment Rating Organization):特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構
2 「ゼルダの伝説 夢をみる島DX」の概要
タイトル | ゼルダの伝説 夢をみる島DX |
発売日 | 1998年12月12日 |
コンソール | ゲームボーイ、ゲームボーイカラー |
移植・復刻状況 | 【3DSバーチャルコンソール(3DS VC)版】 配信開始日:2011年6月8日(2023年3月28日で配信サービス終了) 「夢をみる島『DX』」の移植版は、長らくこの3DSVC版しか存在しなかったが、現在は下記の「NSO版」で遊べる。 【Nintendo Switch Online(NSO)版】 配信開始日:2023年2月9日 |
3 レーティングの根拠と考えられる表現
勿体ぶらずに問題の表現を見てみましょう。
CEROや任天堂が明言しているわけではないので憶測の域は出ませんが、「セクシャル」アイコンの根拠と考えられている表現は主に以下の2つです。
(1)わらしべイベントのアレ
わらしべイベントとは、一見ストーリーとは関係なさそうなアイテムについてコホリント島の住人と次々に物々交換を繰り返していくもので、中にはストーリーを進める上で必須のアイテムもいくつか出てきます。
物々交換を繰り返す点や一見役に立たなそうなモノが後で役に立つ点から、おとぎ話の「わらしべ長者」になぞらえて「わらしべイベント」と呼ばれることが多いようです。
この「わらしべイベント」の中の、マーサの入り江にいる「人魚との交換用アイテム」が「セクシャル」アイコンの根拠の1つと見られており、日本GB版(G&W版):左上、北米GB版(G&W版):右上、日本GBC(3DS VC版):左下、NS版:右下の4つを上記画像で並べてみました。
まあ、多くを語る必要はないでしょう。
現在の感覚で「レーティングが適切か?」という妥当性(評価)の問題は置いておくとして、女性用の下着であるブラジャーが何かしらセクシャルな意味や印象をユーザーに与える「可能性」は否定できないでしょうし、「だからこそ任天堂は、ゲームに関して意図せぬトラブルが発生しないように北米GB版やNS版でネックレスに修正したのではないか?」という推論も、あながち間違ってはいないんだろうなと思います。
(2)どうぶつ村のカバ
「セクシャル」アイコンのもう1つの根拠と見られているのが、どうぶつ村の芸術家「シュール・ドナピッチ」(ワニ)のアトリエでヌードモデルとなっているカバさん。
わらしべイベントの画像と同じく、日本GB版(G&W版):左上、北米GB版(G&W版):右上、日本GBC(3DS VC版):左下、NS版:右下の4つを上記画像で並べてみました。
「日本GB版」と「日本GBC版」は下半身は布をまとって隠しているものの、胸に乳房のようなふくらみの表現がある一方、「北米GB版」は胸のふくらみのない素っ裸、「NS版」はショート丈のタンクトップ(って言うんですかね?)の着用という修正が入っています。
「夢をみる島」(3DS VC版)のCERO指定に関してこのカバのヌードモデルに触れられることは少ないのですが、セクシャルな意味や印象をユーザーに与える「可能性」という観点では、こちらの方が上記のブラジャー表現より直接的なんじゃないかと個人的には感じます。
まあ、そうは言っても所詮「カバ」ですけどね。
4 CERO指定の謎
ということで、「夢をみる島」の「セクシャル」アイコンに関して、一般的には以下のような文脈で語られることがほとんどです。
- CERO審査の開始(2002年10月からスタート)以後にリリースされた「夢をみる島DX」(3DS VC版は2011年6月8日から配信開始)は、上記2つの表現内容を根拠としてレーティングBかつ「セクシャル」アイコンが付くことになった(のだろう)。
(なお、「夢をみる島」には「犯罪」アイコンも付いており、こちらもゲーム体験としてはユーザー間で「語り草」にはなっているのですが、この記事では割愛します) - 2019年のフルリメイクNS版では上記2つの表現に修正が入るのか発売前に話題になっていたが、結果として2つとも修正が入り「セクシャル」アイコンは付かなかった。
しかしですね。。。
実はさらに続きがありまして、上の折りたたみの中の画像でも示しているのですが、1993年の発売から長らく移植も復刻もされていなかったオリジナルGB版が、2021年11月に「ゲーム&ウォッチ(以下「G&W」)ゼルダの伝説」に移植されリリースされました。
そして、この「G&W版」の表現内容は「GBC版」と同じなのに「セクシャル」アイコンが付いていないのです。
「じゃあ、CEROの評価が変わったのか?」と思ってCEROのホームページで検索してみても、「夢をみる島」でヒットするのは「NS版」と「3DS VC版※」の2つのみで、両者のレーティング評価に変更はないようです。
※CEROの検索ページ上の登録名は「夢を見る島DX」になっています(2023年2月9日時点)。
というか、そもそも「G&W版」の「夢をみる島」がヒットしないので、「G&W版」として単独の審査はされてない可能性もあるなと。
これの意味するところは何かと考えると、「G&W版」は「NS版」のCERO評価を流用したんじゃないかと考えています。
というのも、
- 「セクシャル」アイコンが付いた「3DS VC版」の表現内容について、現時点で振り返ってみるとアイコンによる注意喚起が必要な内容とは正直思えない。
例えば、2017年に発売された「ドランゴンクエスト11」には、「パフパフ」や女性キャラクターの「お色気スキル」など、より直接的に「セクシャル」な意味や描写が読み取れる表現があるにも関わらず「コンテンツディスクリプターアイコンなしのレーティングA(全年齢対象)」となっている。 - しかし、「夢をみる島(3DS VC版)」の過去のCERO評価を変えるとなると、同じく評価を見直すべきゲームがあるのではないか?と 過去のCERO審査結果全般の見直し というより大きな話に発展する可能性が高い。
- であれば、ゲームの主たる内容・表現自体は「NS版」と変わらないうえ、ゼルダシリーズ35周年の記念アイテムにすぎず、そもそもCERO審査の対象コンソールでもない「G&Wに収録された『オリジナルGB版』」については、「NS版」の評価を流用するので必要かつ十分。
という判断も十分合理的に思えるからです。
以上は確たる根拠があるわけでもなく個人的な推論にすぎません。
しかし、「G&W版」について任天堂のホームページには堂々と「レーティングB」と記載されていながら、CEROのホームページでは「G&W版」の審査結果がヒットしない状況を説明する理屈としてはそれなりの説得力があると感じます。
そして、仮にこの推論が的を射ている場合、今後も「夢をみる島」の「オリジナルGB版」は他のコンソールへ移植・復刻されにくい状況が続くかもという懸念が生じるんですよね。
というのも、一般ユーザーの視点からすると、よりリッチなゲーム体験ができる「フルリメイクNS版」があれば特に問題はありませんし、任天堂としても「オリジナルGB版」を移植・復刻することで今更「セクシャル」が付いても困惑するだけでしょう。
他方で、CERO視点で考えると、「GBC版(3DS VC版)」でいったん「セクシャル」アイコンを付けた以上、仮に「オリジナルGB版を正式に審査」するとなれば、ほぼ同じ内容のGBC版(3DS VC版)と「同じ評価」になるのが素直な帰結です。
ですが、実質同じ作品なのに直近の「NS版」と評価が異なるのは混乱を招くだけでしょうし、かといって、前述のようにCEROとしても気軽に「過去の評価を見直す」とはなりにくいでしょう。
(面倒くさいとか、そういうことではなく、事実上CERO審査の影響力が大きい以上、慎重にならざるを得ない)
参考記事:海外版と日本版ではどうして表現や内容が違うのか。今,あえてCEROに聞く「レーティング制度」の現状について(2014年2月10日、4Gamer net)
要するに、「夢をみる島」の「オリジナルGB版」は他のコンソールへ移植・復刻って、ゲーム外のややこしい課題を乗り越える必要がある割に「それを乗り越えたところで喜ぶ人いるの?」という、労多くして益少なし みたいな状況なんですよね。
まあ、仮定に仮定を重ねた「杞憂」であれば良いのですが、いずれにせよ「夢をみる島」に関してオリジナルGB版がほとんど移植・復刻されない状況が今でも続いていることを考えると、ゼルダシリーズのファンとしては少し不満というか、残念な気持ちになるのは否めませんね。
5 まとめ
といっても、「夢をみる島」に関してほとんど移植・復刻されない状況が続いていた「オリジナルGB版」と「GBC版」が、最近になって遊びやすくなったのは間違いありません。
「ゲーム&ウォッチ ゼルダの伝説」にて移植・復刻された「オリジナルGB版」(G&W版)は貴重な存在ですし、「G&W版」は「初代ゼルダ」「リンクの冒険」「夢をみる島」の3作品を収録しているうえ、いずれも日本版と海外版が用意されているので資料的価値も高く、かなりお得です。
ゼルダファンであればおススメの逸品と言えるでしょう。
また、「夢を見る島DX(GBC版)」も現在はNintedo Switch Onlineで遊べるので、無印・DX・フルリメイクの各バージョンを遊び比べてみるのも一興ではないでしょうか。
この記事が「夢をみる島」に興味を持った方のご参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
以上
ゼルダシリーズ早見表